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ここではプロジェクトを管理する上で必須の知識であるEVM(Earned Value Management)について解説していきます。
EVMを理解することで、プロジェクト管理・リスク管理能力が向上するだけでなく、自分のキャリアアップにもつながります。また、応用情報技術者試験の対策にもなります。
このページは応用情報技術者に受かるレベルの解説を提供しています。特徴と簡単な計算式を覚えたら解けるようになるので、チャンス問題として対応できるようにしましょう!
では、前置きはここまでにして早速やっていきましょう!
p.s.9個も指標があるので、リラックスして分割しながらやっていきましょう!
EVMとは
では、まずはEVMの特徴を把握しておきましょう。
特徴(Features):
- 予算とスケジュールの進捗を統合的に評価します。
(予算=計画段階での予想される費用) - コストとスケジュールに対するパフォーマンスを定量化し、プロジェクトの健全性を評価します。(コスト=実際にかかった費用)
- 問題を早期に特定し、プロジェクトの進捗をリアルタイムで把握することができます。
- 将来の進捗を予測するための指標を提供します。
- ステークホルダーや管理者にプロジェクトの進捗を報告します。
- プロジェクトの開始時・進行中・終了のすべてのプロセスで利用
初期=ベースライン設定&目標を明確化
進行中=進捗を定期的に評価&問題を早期に発見します。
終了時=成果物と実際の成果を比較し、学びを得ます。 - EVMは長期間・大規模・リソースが豊富なプロジェクトに適します。
では、次からは実際に指標の求め方や見方を学んでいきましょう。
PV(Planned Value):予定価値
PVの概要:
- Planned Valueの略
- 予定された作業の費用または価値を表す。
- 実際の進捗と比較して、プロジェクトの進捗を確認するために使用される。
PVの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- プロジェクトが1か月かけて100個の製品を製造する
- 1週目の終わりまでには25個の製品を完成させる予定
この場合、その時点でのPVは製造コストの25%になります。
EV(Earned Value):実績価値
EVの概要:
- Earned Valueの略
- 実際に完了した作業の費用または価値を表す。
- プロジェクトの予算消費と予算の達成度を追跡し、必要に応じて予算を調整するために使用される。
- 問題の早期発見や対策の実施に役立てる。
- プロジェクトの状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて行動を起こすことが可能になります。
EVの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- あるプロジェクトが1か月かけて100個の製品を製造する
- 1週目の終わりまでに25個の製品が完成している
この場合、EVはその25個の製品の価値に相当します。
BAC(Budget at Completion):完了時総予算
BACの概要:
- Budget at Completion(:完成)の略
- BACはプロジェクトが完了するまでにかかる見積もり予算の合計額を表します。
- プロジェクトの開始時点でのBACは、初期の見積もりに基づいて設定されるため、不確実性があります。
BACの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- プロジェクトが完了するまでに必要な総予算は100,000円
この場合、BACは100,000円となります。
AC(Actual Cost):実績コスト
ACの概要:
- Actual Costの略
- ACは、実際にプロジェクトに費やされた費用を表します。
- ACを使用して実際のコストを追跡し、予算と比較することで、プロジェクトの予算達成度を評価することができます。
(予算達成度:プロジェクトが予定された予算内で実行されているかどうかを示す指標)
ACの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- あるプロジェクトが1か月かけて100個の製品を製造する
- 1週目の終わりまでにかかったコストが50,000円
この場合、ACは50,000円になります。
SV(Schedule Variance):スケジュール差異
SVの概要:
- Schedule Variance(:差額)の略
- SVは、プロジェクトの進捗状況を示す指標であり、予定された作業の進捗と実際の進捗との差を表します(=作業量の差)。
- SVが正の値の場合→予定された作業よりも早く完了
- SVが負の値の場合→予定された作業よりも遅れて完了
- SVがゼロの場合→プロジェクトの進行が予定通りであることを示します。
SVの求め方:
$$SV=EV-PV$$
SVの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- プロジェクトが1週間で10個のタスクを完了する予定
- 実際には7個のタスクしか完了していない
この場合のSVは『7-10=-3』になります。つまり、プロジェクトは予定よりも3つのタスクが遅れていることを示します。
CV(Cost Variance):コスト差異
CVの概要:
- Cost Variance(:差額)の略
- プロジェクトの予算と実際のコストの差を表します。予定された費用と実際の費用との比較によって計算されます。
- CVが正の値の場合→実際にかかったコストが予算よりも少ない
- CVが負の値の場合→実際にかかったコストが予算よりも多い
- CVがゼロの場合→プロジェクトの実際のコストが予算と一致している
CVの求め方:
$$CV=EV-AC$$
CVの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- 完成時のプロジェクト予算が100,000円
- 実際の40%の作業を完了するのに20,000円かかった
CVは20,000円になります。つまり、プロジェクトは予算よりも20,000円安くなっています。
p.s. EVは100,000の40%だから40,000円と計算できます。
CPI(Cost Performance Index):コストパフォーマンス指数
CPIの概要:
- Cost Performance Index(:指数)の略
- プロジェクトのコストパフォーマンスを示す指標です。
- コストを使ってどれだけの価値を生み出せたかを表します。
- CPIが1より大きい場合→プロジェクトは予定通りに予算内でコストが管理されている
- CPIが1より小さい場合→プロジェクトの実際のコストが予定よりも多くかかっている
(=オーバーランが発生)
CPIの求め方:
$$CPI=EV÷ AC$$
CPIの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- 予定されているコスト(Planned Value、PV):100,000円
- 実際に達成した価値(Earned Value、EV):80,000円
- 実際のコスト(Actual Cost、AC):90,000円
CPIは80,000÷90,000=0.888~=0.89となります。
CPIが1よりも小さい→プロジェクトのコストパフォーマンスは予想よりも低い→プロジェクトは予算をオーバーしている可能性
EAC(Estimate at Completion):完了見積もり
EACの概要:
- Estimate(:見積もり) at Completion(:完成)の略
- EACは、プロジェクトの最終的な完成見積もりを示す指標
- 現在のプロジェクトのパフォーマンスに基づいて将来のコストを予測
- EACはプロジェクトの進行状況や予算消費率を考慮して計算されます。
- EACは現在のコスト効率をもとに完了時のコストを予測する指標です。
EACの求め方:
$$EAC=AC+(BACーEV)÷CPI=AC+(BACーEV)÷(EV÷AC)$$
EACの例題:
あるプロジェクトが次のような状況にあるとします:
- 予算見積もり(BAC:Budget at Completion):1000,000円
- 実際に達成した価値(EV:Earned Value):700,000円
- 実際のコスト(AC:Actual Cost):800,000円
EACは800,000+(1000,000-700,000)÷(700,000÷800,000)=1,142,857.14円となります。つまり、プロジェクト完了時のコスト見積もりは1,142,857円ということになります。
おわりに
ここまで、EVM(Earned Value Management)の内容をササっとまとめてきました。これらを理解することで、プロジェクトに携わる人間として前提知識を取得できたことになります。
今回のようにどんどん学び、目指すキャリアを実現していきましょう!