
QoSというのは ネットワークの トラフィックを制御する方法です。代表的な手法としてDiffServがあります。
DiffServはトラフィックを分類することで 優先度を設け、緊急を伴う通信は逃さないようにするという方法です。トラフィックの優先度は IPパケットのヘッダであるDSCPフィールドに格納します。
これらの優先度を使うことによって、パケットの送信順序が整理され、より適切な通信が実現できるわけです。
問題文
ある企業では、拠点間の通信を最適化するために、QoS(Quality of Service)の導入を検討している。この企業は以下のような要件を抱えている。
- 拠点間での音声通話(VoIP)は、リアルタイム性が重視され、遅延(Latency)を50ms以内に抑えたい。
- 動画会議のデータは、安定した帯域幅を確保する必要があり、パケット損失率(Packet Loss)が1%以内であることを要求されている。
- 社内ファイル転送は大量のデータを伴うが、遅延が発生しても問題ない。
ネットワーク管理者は、これらの要件を満たすために以下の設計案を立てた。
また、各通信には異なる優先順位を設定し、DiffServ(Differentiated Services)を利用して、トラフィックを分類・制御することを考えている。
【設計案】
- 音声通話(VoIP): Expedited Forwarding(EF)クラスを使用し、優先的に処理する。
- 動画会議: Assured Forwarding(AF)クラスを利用し、帯域幅を確保しつつ、他の通信と共存させる。
- ファイル転送: Best Effort(BE)クラスを利用し、空いている帯域を活用する。
この設計案に基づき、QoSを実装するためのポリシー設定を検討したところ、次の課題が発生した。
【課題】
- 帯域幅が限られている場合、VoIPと動画会議の通信が競合する可能性がある。
- ファイル転送が増加した場合、全体の遅延が増大し、リアルタイム性を必要とする通信に影響が出る可能性がある。
これらの課題を踏まえ、以下の設問に答えよ。
設問
設問1
QoSにおけるDiffServの仕組みについて、以下の用語を使って50字以内で説明せよ。
「トラフィッククラス」「優先度」
設問2
上記の設計案に基づき、VoIPと動画会議の競合を避けるための具体的な対策を50字以内で説明せよ。
設問3
ファイル転送のトラフィックが急増した場合に備え、全体のQoSを維持するために設定すべき具体的な制御方法を2つ挙げ、それぞれ50字以内で説明せよ。
解答
設問1
QoSにおけるDiffServの仕組みについて、以下の用語を使って50字以内で説明せよ。
「トラフィッククラス」「優先度」
解答:
DiffServはパケットに優先度を示すパケットマークを付け、トラフィッククラスごとに異なる優先度で処理する仕組み。
解説:
DiffServ(Differentiated Services)は、IPパケットのヘッダに「DSCP(Differentiated Services Code Point)」というフィールドを使用して、トラフィックを分類します。これにより、ネットワークデバイスはパケットマークを基にトラフィッククラスを判別し、優先度に応じて帯域幅や遅延を制御します。この仕組みはシンプルでスケーラブルなQoSの手法として広く使われています。

DSCPフィールドとはIPヘッダの「Type of Service (ToS)」フィールド内に存在し、6ビットで表現されます。これにより、最大64種類(2^6 = 64)のクラスを指定できます。その中のEFクラスは46、BF(best effort)は0、という特定の値を持ちますが、AFクラスは更に細分化されA1~A4(10~38)のクラスに分かれています。
AFクラス | ドロップ優先度 | DSCP値 | バイナリ値 |
---|---|---|---|
AF11 | Low | 10 | 001010 |
AF12 | Medium | 12 | 001100 |
AF13 | High | 14 | 001110 |
AF21 | Low | 18 | 010010 |
AF22 | Medium | 20 | 010100 |
AF23 | High | 22 | 010110 |
AF31 | Low | 26 | 011010 |
AF32 | Medium | 28 | 011100 |
AF33 | High | 30 | 011110 |
AF41 | Low | 34 | 100010 |
AF42 | Medium | 36 | 100100 |
AF43 | High | 38 | 100110 |
設問2
設計案に基づき、VoIPと動画会議の競合を避けるための具体的な対策を50字以内で説明せよ。
解答:
EFクラスの帯域幅を固定で確保し、AFクラスの帯域幅を動的に調整する。
解説:
VoIPは遅延に非常に敏感なため、EF(Expedited Forwarding)クラスで一定の帯域を保証する必要があります。一方、動画会議は比較的柔軟に帯域を調整できるため、AF(Assured Forwarding)クラスで動的制御を行うことで競合を回避します。たとえば、EFに50ms以内の処理を優先させ、AFに空き帯域を割り当てることで実現可能です。

EFクラスやAFクラスは、IPパケットのDSCPヘッダ内に格納する値として定義されます。
EFクラスは、リアルタイム性が要求される通信を最優先で処理するために設けられたトラフィッククラスです。
AFクラスはAFクラスは、重要度はあるがEFほど厳密なリアルタイム性を必要としない通信を制御するためのトラフィッククラスです。
設問3
ファイル転送のトラフィックが急増した場合に備え、全体のQoSを維持するために設定すべき具体的な制御方法を2つ挙げ、それぞれ50字以内で説明せよ。
解答1:
BEクラスにポリシングを設定し、帯域使用量を制限する。
解説:
ポリシングは特定のトラフィックが設定した帯域を超えた場合に、パケットを破棄または遅延させる方法です。これにより、Best Effort(BE)トラフィックがQoS全体に影響を与えないよう制御できます。

BE(Best Effort)とはQoS制御を行っていない通信のことです。つまり、トラフィックが空いているいるときは問題ないけど、混んできたらもろに影響を被るという通信形態です。
解答2:
優先度の低いトラフィックにシェーピングを適用し、送信速度を調整する。
解説:
シェーピングは、トラフィックの送信速度を調整し、急激な帯域占有を緩和する方法です。BEトラフィックに適用することで、EFやAFクラスの通信が影響を受けにくくなります。

シェーピングの他にはポリシングというものもあります。
シェーピングはトラフィックを一旦バッファに蓄えて、そこから再度送信することで、送信レートを一定に保つ方法です。
ポリシングは設定されたトラフィック量を超えたものを破棄することによってトラフィックを制御する方法です。