はじめに
企業を絞るのに時間がかかって、財務諸表を読むまでに多くの時間を費やしてしまう…..
これは多くの投資家が抱える悩みでしょう。しかし、それはスクリーナーを使えば大きく短縮できます。スクリーナーの指標を知れば知るほど、求めている企業により早く出会うことができます。
ということで、今回は投資家がスクリーナーで使うべき投資指標について紹介していきます。また、ウォーレン・バフェットなどの有名投資家の見解なども交えながら解説しているので参考にしてみてください。
p.s.スクリーナーはinvesting.comや楽天証券、Yahoo!ファイナンスなどでの多くのサイトで利用できます。
1株当たり利益(EPS)
$$\text{EPS} = \frac{\text{企業の純利益}}{\text{発行済み株式数}}$$
- 1株当たり利益(EPS:Earnings Per Share)は、企業の純利益を発行済み株式数で割った値を指します。
- 企業が一株当たりどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。
- EPSを計算するためには、企業の純利益(すなわち、企業が一定期間(通常は1年間)で得た利益から税金や償却費用などを差し引いたもの)をその企業の発行済み株式数で割ります。
- EPSが高いほど、企業は株主に対してより多くの利益を配当することができるということを意味します。
- 投資家が企業の収益性や成長性を評価する際に参考にします。EPSが安定して成長している企業は、投資家からの評価も高くなる傾向があります。
- EPSが高ければ高いほど、原則的に株価も高くなる
- バフェットの見解
- 値の大きさよりも過去10年における一貫性と上昇トレンドを重視する
5年EPS成長率
$$ \text{5年間のEPS成長率} = \left( \frac{\text{最新のEPS}}{\text{5年前のEPS}} \right)^{\frac{1}{5-1}} – 1 $$
- 5年EPS成長率は、過去5年間のEPSの平均的な成長率を表します。
- 企業の利益がどれだけ成長しているかを示します。
- 成長率が高い企業は、将来的な利益の増加が期待される可能性があります。
- 5年間でEPSが持続的に成長している企業は、投資機会として注目されることがあります。
売上高当期純利益率(純利益率)
$$\text{売上高当期純利益率} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{売上高}} \times 100\%$$
- 売上高当期純利益率(または単に純利益率とも呼ばれます)は、企業の売上高の内、当期純利益が何%占めているかを表す財務指標です。
- 高い売上高当期純利益率は、会社の利益獲得力が高いことを示します。投資家から評価が高くなりやすいです。
- 同業他社と比較したり、過去の自社の当期純利益率の推移をチェックしたりすることが有効です。
- 当期純利益には突発的な特別損益も含まれるため、他の指標と併せて判断することが大切です。
- 当期純利益は、その事業年度における利益から、法人税などのすべての費用・損失を差し引いた最終的な利益です。
- バフェットの見解
- 純利益率が20%以上だと永続的競争優位性を持っている可能性が高いと判断する。
- 10%以下だと過当競争気味の業界にある
- 10~20%の間はグレーゾーンで、金の卵になるかも….
- 経常外の特別損益などは純利益から除外して考えるべき
ROE(株主資本利益率)
$$\text{ROE} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{純資産}} \times 100\%$$
- ROE(株主資本利益率、自己資本利益率)は英語の「Return On Equity」の略で、会社が資本を効率よく活かし、利益をあげているかを測る数値です。
- 自己資本は、株主から出資してもらったお金など、返済が不要な資産のことです。
- ROEの数値が高いほど、自己資本をうまく活用し、効率的な経営ができていると見ることができます。
- 高いROE
- 企業が自己資本を効果的に利用し、収益性を高めていることを示します。
- これは、企業の経営陣が資本を効率的に運用していることを意味します。
- 企業が収益性を改善し、自己資本を拡大するために効果的な戦略を実行していることを示し、将来の成長に対する投資家の期待を高めることがあります。
- 投資家から好意的に見られ、株価が上昇する傾向があります
- ROEは、企業の成長性を評価する上で重要な指標の一つです。
- ROEは、同じ業界内の企業を比較する際にも有用です。同じ業界で同様の事業を行う企業のROEを比較することで、企業間の収益性と競争力を評価することができます。
- 「当期純利益」は、1会計期間のすべての収益から費用などを差し引いた、会社の最終的な利益をさします。
- 楽天証券にはあるけど、investing.comではないかも
- バフェットの見解
- 永続的または長期的競争優位性を持っている企業はROEが平均よりも高くなる
- ROEの高さは企業が内部留保を効率的に運用していることを示す
- ROEが高ければ行ってよし、低ければ近づくな
- ケイデン・チャンの見解
- 過去5年に渡りROEがだいたい15%以上なら良し
- 15%以上見つからない場合は同業他社と比較して高いものを選ぶ
- バフェットも15%以上なら四半期の業績を心配することはないと言っている
粗利益率
$$\text{粗利益率} = \left( \frac{\text{売上高} – \text{売上原価}}{\text{売上高}} \right) \times 100\%$$
- 粗利益率は、企業が売上高から直接的な生産費用や原材料費、製造費用などを差し引いた後に残る利益の割合を示す指標です。
- 粗利益率は、企業の商品やサービスの生産コストと売上高の関係を表し、企業が商品やサービスを生産する際の効率性や収益性を評価するのに役立ちます。
- 粗利益率が高いほど
- 企業は生産コストを抑え、売上高からより多くの利益を得ています。
- 一般的には、粗利益率が高い企業は収益性が高く、経営効率が良いと考えられます。
- このため、投資家や経営者は粗利益率を注視し、企業の収益性や競争力を評価します。
- 粗利益率はあくまで生産コストの一部を示す指標であり、他の費用(例:販売費用、一般管理費用、税金など)は差し引かれていない。
- 純利益率など他の指標と併せて評価することが重要です。
- バフェットの見解
- 企業が高い粗利益を稼ぎ出せるのは、永続的競争優位性の存在によって、売上原価をはるかに上回る価格設定の自由が与えられるから。
- 一般的に粗利益率が40%以上なら何らかの競争優位性を持っている可能性
- 40%以下は長いスパンで私たちを金持ちにしてくれないことが多い
- 過去10年間の粗利益率を追跡し一貫性を確かめる必要がある。
- 粗利益率は確実な指標とはならないこともある
インタレストカバレッジレシオ(ICR)
$$\text{ICR} = \frac{\text{営業利益}}{\text{支払利息}}$$
- インタレストカバレッジレシオ(ICR:Interest Coverage Ratio)は、営業利益に対する支払利息の割合を表します。
- ICRは企業の営業利益を利息費用で割ったものです。
- 楽天証券にあるけどinvesting.comにはないかも
- バフェットの見解
- 永続的競争優位性をもつ企業は支払利息をほとんど、もしくは全く計上していない
- バフェットのお気に入りとなっている企業はICRが15%以下
- 業界によって大きく変わる。バフェットのお気に入りのウェルズファーゴ銀行は30%
- どの業界においてもICRがもっとも低い企業が競争優位性を持っている可能性が1番高い
ROA(総資産利益率)
$$\text{ROA} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{総資産}} \times 100\%$$
- ROA(総資産利益率)は「Return On Asset」の略で企業がどれだけ効率的に資産を使っているのかを見定めることができる
- ROA(Return on Assets:総資産利益率)は、企業の総資産を活用して利益を生み出す能力を示す指標です。ROAは、企業の当期純利益を総資産で割り、その結果をパーセントで表します。
- ROAが高いほど
- 企業は総資産をより効率的に活用して利益を生み出していることを意味します。
- 一般的には、ROAが高い企業は、投資家や経営者から評価され、市場で高い評価を受ける傾向があります。
- 総資産は、自己資本だけでなく他人資本を含めたすべての資産を指します。
- バフェットの見解
- 総資産利益率は必ずしも高い方が良いわけではない
- あまりにも高い総資産利益率は、競争優位性の脆弱さを表す
- 総資産利益率は参入コストなどを表すため新規参入の障壁具合を表せる
- ケイデン・チャンの見解
- ROAが7%以上に絞ると優良企業が割り出せる
- 7%で見つからない場合は安定している上昇しているというだけでもOK
負債比率(自己資本比率)
$$\text{負債比率} = \frac{\text{総負債}}{\text{純資産合計}} \times 100\%$$
$$\text{自己株式調整済み負債比率} = \frac{\text{総負債} – \text{自己株式}}{\text{自己資本}} \times 100\%$$
- 負債比率(自己資本比率)は、企業が負債と自己資本をどの程度利用して資金を調達しているかを示します。
- 収益力が高い企業は自社株買いをするため純資産は減少し、負債比率が上昇してしまう。
- これだと、優良企業と凡庸な企業の見分けがつかなくなる
- →負債比率を自己株式調整済み負債比率に直して考える
- 一般的には、負債比率が低いほど、企業の財務的な安定性が高いと見なされます。
- 純資産合計は自己資本合計とも呼ばれる
- 「総負債」は企業の負債の合計額、「自己資本」は企業の資産のうち、株主からの出資によって資金を調達した部分を指します。負債比率が50%であれば、企業の負債が自己資本の50%を占めていることを意味します。
- 負債比率が低い場合
- 企業は財務的に安定しており、将来の成長に対する柔軟性が高まります。
- ただし、負債比率が低すぎる場合は、資本を効率的に活用できていない可能性があります。
- 負債比率が高い場合、
- 企業は財務リスクが高くなります。
- 高い負債比率は、負債の返済に対する圧力が増加し、利息負担が増大する可能性があります。
- 負債比率が高いと、株主のリターンが損なわれる可能性があります。
- ウォーレンの見解
- 負債比率だと優良と凡庸が見分けられないので自己株式調整済み負債比率を重要視する
- 自己株式調整済み負債比率が0.80以下(低いほどよい)なら永続的競争優位性を持っている可能性が高い
*自己株式調整済み負債比率の計算方法の詳細
1.負債-自己株式=調整済み負債
2.調整済み負債÷全資本(自己株式 + 他人株式)=自己株式調整済み負債比率
PER(株価収益率)
$$\text{PER} = \frac{\text{株価 (Price)}}{\text{1株あたりの利益 (EPS)}}$$
- PER(株価収益率)は、株価収益率(Price-to-Earnings Ratio)の略称です。
- 株価を企業の1株あたりの利益(EPS:Earnings Per Share)で割ったものです。
- PERを計算することで、株価が企業の利益に対してどれだけ高いか、安いかを示す指標として利用されます。
- PERが高い場合
- 株価が企業の利益に対して高く評価されていることを意味します。
- これは、市場がその企業の将来の成長や利益に楽観的な見方をしている可能性があります。
- PERが低い場合
- 株価が企業の利益に対して低く評価されていることを示しています
- 市場がその企業の将来の成長や利益に対して悲観的な見方をしている可能性があります。
- 例えば、ある企業のPERが20倍の場合、株価はその企業の1株あたりの利益の20倍に相当します。つまり、市場はその企業の将来の利益に20倍の価値を与えているということになります。
- 同業種で比較する
- バフェットの師匠グレアムの見解
- PERが10倍以上の銘柄には手を出さない
P/E比率 (TTM)
$$\text{P/E比率 (TTM)} = \frac{\text{株価 (Price)}}{\text{(EPS)}}_{\text{(直近12か月間)}}$$
- P/E比率 (TTM)は “Price-to-Earnings Ratio (Trailing Twelve Months)” の略です。すなわち、「株価収益率(直近12か月間)」を示しています。
- P/E比率(TTM)は、直近12か月間(Trailing Twelve Months)の利益に基づいて計算される株価収益率です。
- TTMは、過去12か月間に企業が実際に達成した利益を基にしているため、将来の利益を予測するのではなく、実績に基づいています。
- PERの12か月バージョン
PBR(MRQ)
$$\text{PBR} = \frac{\text{株価 (Price)}}{\text{1株当たりの純資産 (BPS)}}$$
$$\text{BPS} = \frac{\text{純資産 (Net Assets)}}{\text{発行済み株式数}}$$
- PBR(株価純資産倍率)は、株価(Price)を1株当たりの純資産(BPS:Book Value Per Share)で割った比率です。
- PBRは企業の株価が1株当たりの純資産に対してどの程度高く評価されているかを示します。
- 純資産は、企業の資産から負債を差し引いたものであり、企業の実質的な価値を表します。
- PBR(MRQ)は、最も最近の四半期(Most Recent Quarter)の純資産を基にして計算されます。
- PBRが高い場合
- 株価が1株当たりの純資産に対して高く評価されていることを示します。
- 市場は企業の実態資産に対して高いプレミアムを支払っていると考えられます。
- このような状況では、市場が企業の将来の成長や利益に対して楽観的な見方をしている可能性があります。
- PBRが低い場合
- 株価が1株当たりの純資産に対して低く評価されていることを示します。
- 市場は企業の実態資産に対して割安とみなしていると考えられます。
- このような状況では、市場が企業の将来の成長や利益に対して悲観的な見方をしている可能性があります。
- ケイデン・チャンの見解
- PBRが0.7倍以下になったら買う
PSR (株価売上高倍率) (TTM)
$$\text{PSR (株価売上高倍率) (TTM)} = \frac{\text{株価 (Price)}}{\text{売上高 (Sales)}}_{\text{(直近12か月間)}}$$
- PSR(株価売上高倍率)は、企業の株価を売上高で割った比率です。
- 企業の株価が売上高に対してどれだけ高く評価されているかを示す指標です。
- PSR(TTM)は、直近12か月間(Trailing Twelve Months)の売上高を基にして計算されます。
- PSRは企業の株価を売上高で割ることで算出され、投資家が企業の株価を売上高に対してどの程度高いか、安いかを評価するのに役立ちます。
- PSR(株価売上高倍率)が高い場合
- 株価が売上高に対して高く評価されていることを意味し、市場がその企業の将来の売上高成長に楽観的な見方をしている可能性があります。
- PSRが高い企業は、市場が売上高に対して高い評価をしている可能性があります。
- PSRが低い場合
- 株価が売上高に対して低く評価されており、市場が将来の売上高成長に対して悲観的な見方をしている可能性があります。
- 市場が売上高に対して低い評価をしていると考えられます。
- 売上高が安定しているか、または成長が見込まれている場合があります。
- 割安と見なされることがあり、将来の成長や利益の伸びが期待される場合に投資の対象となることがあります。
- 同じ業界の企業のPSRを比較することで、その業界全体の株式の評価水準を把握することができます。
- PSRは、企業の売上高に対する株価の評価を示す指標であるため、企業の業績の安定性や成長性を評価するのに役立ちます。
おわりに
今回、紹介した指標で絞ることで、より時間を短縮できるようになります。また、ここで紹介した投資指標以外にも多くの指標があるので、自分の投資スタイルにあう投資指標も見つけてみてください。
また、このページは以下の書籍などを参考にした部分もあるので、詳しく知りたい方は読んでみてください。