リターン・分かりやすく・期待収益率
はじめに
今回は、様々な期待収益率の計算方法を紹介していきます。色々と解説していますが、それは絶対的なものではないということを前提に進めてください。あくまでも、企業を評価する一つの物差しとして使ってください。
期待収益率を正しく計算するにはその企業の利益をある程度正確に予想することが前提です。
また、ここでは、バフェット流で期待収益率を求めます。バフェット流とは『企業の本質価値を計算するのではなく、将来の株価を予想し、それに基づく期待収益率を計算する』ことです。
EPSと期待収益率
ここでは、EPSを軸として期待収益率を算出していく方法を紹介します。
①EPS(1株当たり利益)
$$\text{EPS} = \frac{\text{企業の純利益}}{\text{発行済み株式数}}$$
- まずは、1株でどれだけの利益を生み出せるかを算出する
②直接利回り(直利)
$$\text{直利} = ( \frac{\text{EPS}}{\text{購入株価}} ) \times 100\%$$
- 購入株価から、何%の利益が還ってくるかを算出する
③EPS成長率(p.112,156)
$$EPS成長率=(\frac{\text{最新年のEPS}}{\text{基準年EPS}})^{\frac{1}{\text{年数}}} – 1$$
- 期間を3年、10年のように、短期間・長期間で比較する
- 最新年のEPS÷基準年EPSを求めることで、EPSが何倍になっているかが分かる
- 年数は、最新年-基準年で求める
④10年後のEPS(p.156)
$$(\text{EPS成長率} + 1)^{10} \times 最新EPS= \text{10年後のEPS}$$
- 20年だったら20乗すればいいだけ
- 結局、1.1を何回かけるかを累乗で表しているだけ
3年後だったら、(EPS成長率×1.1×1.1×1.1)
⑤予想株価(p.157)
$$\text{PER} = ( \frac{\text{株価}}{\text{EPS}} )$$
$$\text{予想株価} = \text{予想EPS} \times \text{PER}$$
- 設定するPERは、過去10年の平均をとるとよい
→最高PERで計算してしまうと、大きな損失を被る可能性がある - 設定するPERは、期間中のもっとも低いPERを採用すると保守的
⑥期待収益率
$$期待収益率=(\frac{\text{算出済み予想株価}}{\text{購入株価}})^{\frac{1}{\text{年数}}} – 1$$
- これにより、期待収益率が計算できる
BPSと期待収益率
ここでは、EPSを軸として期待収益率を算出していく方法を紹介します。
①現在のBPSを求める
$$BPS=\frac{純資産}{発行済み株式数}$$
- BPSは1株で企業の純資産をどれだけ保有できるかを表す。
②BPS成長率を求める
$$BPS成長率=(\frac{\text{最新年のBPS}}{\text{基準年BPS}})^{\frac{1}{\text{年数}}} – 1$$
- 期間を3年、10年のように、短期間・長期間で比較する
- 最新年のEPS÷基準年EPSを求めることで、EPSが何倍になっているかが分かる
- 年数は、最新年-基準年で求める
③N年後のBPS
$$(\text{BPS成長率} + 1)^{N} \times 最新BPS= \text{N年後のBPS}$$
- 20年だったら20乗すればいいだけ
- 結局、1.1を何回かけるかを累乗で表しているだけ
3年後だったら、(EPS成長率×1.1×1.1×1.1)
④現在の妥当株価を割り出す
前提:N年後の予想株価がN年後の予想BPSに等しいと考える。その前提の上で現在時点における妥当株価を割り出す。
$$\text{現在の妥当株価} =\frac{N年後株価(BPS)}{(1+期待収益率)^{N}}$$
- 期待収益率には自分が求める水準を当てはめる
- バフェットなら最低でも15%程度の収益率を要求する
→期待収益率には0.15をいれる - これは、予想株価から逆算して現在の株価が妥当かどうかを調べたもの
配当の取得予想額(p.141~
①内部留保と配当の比率を算出する
$$\text{内部留保比率} = \frac{\text{内部留保の差額}}{\text{当期純利益}} \times 100\%$$
$$\text{配当比率} = \frac{\text{配当}}{\text{当期純利益}} \times 100\%$$
- 純利益のうち、内部留保に充てられる比率と、配当に充てられる比率を求める
- 内部留保は累積額だから、前期と当期の差額が充てられた本来の額
②1年おきのEPSを求める
$$\text{N年後のEPS}=(\text{EPS成長率} + 1)^{N年} \times 最新EPS$$
- これを1年おきに算出しておく
③EPSから配当金を算出
$$\text{その年の配当金}=\text{その年のEPS}\times \text{配当比率}$$
- これも1年おきに算出する
④配当金の合計をもとめる
①1年おきに算出した配当金の合計を算出する
$$\text{配当金}=\text{配当合計}\times \text{取得株数}-\text{配当課税額}$$
内部留保(利益剰余)の有効活用度をチェック(p.172
1.調べたい期間中のEPSの合計額を出す
2.同じ期間の1株あたり配当を合計する
3.EPS合計-配当を合計を求めて、再投資額を導出する
4.期間中のEPSの増分を求める(最新年EPS-期間開始EPS)
5.『増分EPS÷再投資額』を算出する(ROE)。これにより、利益剰余金がどれだけ上手く使われたかが分かる。
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PERで算出する方法(pp139
①ROEを算出する
$$\text{ROE} = \frac{\text{当期純利益}}{\text{純資産}} \times 100\%$$
ROE:純資産を使って、どれだけの利益を生み出したか
②BPSを算出する
$$\text{BPS} = \frac{\text{純資産}}{\text{発行済み株式数}} \times 100\%$$
BPS:1株でどれだけの企業の純資産を保有できるかを表す
③内部留保と配当の比率
$$\text{実質内部留保比率比率} = \text{ROE}\times\text{内部留保比率}$$
$$\text{実質配当比率比率} = \text{ROE}\times\text{配当比率}$$
- 純利益のうち、内部留保に充てられる比率と、配当に充てられる比率を求める
- 内部留保は累積額だから、前期と当期の差額が充てられた本来の額
参考:
$$\text{内部留保比率} = \frac{\text{内部留保の差額}}{\text{当期純利益}} \times 100\%$$
$$\text{配当比率} = \frac{\text{配当}}{\text{当期純利益}} \times 100\%$$
③BPSとEPSを予想する
前提:内部留保比率と配当比率は今後も変わらないと仮定する
$$\text{10年後のBPS}=(\text{現在のBPS} \times (1+実質内部留保比率))^{10} $$
$$\text{10年後のEPS}=(\text{10年後のBPS} \times \text{ROE})$$