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EPS,PER,ROE,PBR,ROA,BPSなどの株価指標が、重要な値であることまで分かったけど、いまいち何を表しているのかがピンとこなくて、モヤモヤしてしまっている……。こんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
この記事では、株価指標が表している意味・原理・重要性などを投資初心者でも分かりやすいように簡単な言葉で、例えを交えながら解説しています。
また、この記事の到達点は、株価指標などの値を見たときに、その数字から企業の経営背景や成長性をも見て取れるようになることです。そしてそれは、賢い投資家への第一歩を踏み出すことを意味するでしょう。
知識をつけて、自分で考えられるなって経済評論家やFPに騙されないようになりましょう!
前提知識は分数だけ!!
今回紹介する株価指標を理解するために必要な前提知識は「分数の性質」だけです。以下で記す分数の性質を押さえることが理解の助けとなります。
- 分母が大きいほど、値は小さくなる
→\(\displaystyle \frac{1}{1}\)と\(\displaystyle\frac{1}{1000}\)では分母の大きな\(\displaystyle\frac{1}{1000}\)の方が小さな値を意味します。
- 分母が小さな数字ほど、値は大きくなる
→\(\displaystyle \frac{100}{10}\)と\(\displaystyle\frac{1000}{5}\)だったら分母の小さな\(\displaystyle\frac{1000}{5}\)の方が大きな値を意味します。
とてもシンプルで当たり前のことですが、これが意外と理解の助けになったりするので侮ってはいけません。逆に、裏を返せばこれさえ理解できれば株価指標も理解できたと同然です。
では、前提知識はここまでにして次項から早速、株価指標を学んでいきましょう!
EPS(Earning Per Share) :1株あたりの純利益
EPSとは
EPS(Earning Per Share)とは1株あたりの純利益を表す指標です。EPSは当期純利益を発行済み株式数で割ることで求められます。
$$EPS=\frac{当期純利益}{発行済み株式数}$$
EPSは簡単に言うと、企業の収益性を評価するための指標です。要するに、企業が1株の株式を保有する株主に対して、その1株当たりの純利益を示しています。EPSが高いほど1株当たりの利益が多いことを意味するため、投資家にとっては魅力的に映ります。
実際の例にあてはめて練習
Q.例えば、同じ株価の会社A,BのEPSが以下の様な場合には、どのような導出ができますか?
*EPSは株価に影響されるため、ここでは同じ株価に設定しています。
- AのEPS:100円
- BのEPS:50円
導出:EPSの大きなAの方が利益を多くもたらしてくれると考えられる。
しかし、ここで注意しなければならないのが分数の性質です。分数は分母が小さいほど大きな値になりますよね?ということは….再度、EPSの公式を確認してみてください。そうです。もし、Aの当期純利益が好調でなくても、発行済み株式数が極端に小さかったら、EPSは大きな値を示すことになるのです。
これがEPSの難しいところです。でもじゃあ、EPS見たって意味ないじゃん!って思いますよね。しかし、この導出ができたことによって、次に「どの指標を見るべきなのか・何を考慮すべきなのか」などのやるべきことが明確になります。そして、まさに次項で学ぶ、PER,PBR,ROEの指標を確認することが次にやるべきことなのです。
EPSをまとめると
- EPSは1株あたりの純利益
- EPSが大きいと1株当たりの利益も大きくなる
- 分数の性質を理解して使う
- 判断材料としてEPSだけを用いるのは危険!
PER(Price Earnings Ratio) :株価収益率
PERとは
PER(Price Earnings Ratio)とは、実際の株価がEPS(1株あたりの利益)の何倍になっているのかを表す指標です。PERは株価をEPSで割ることで求められます。
$$PER=\frac{株価}{EPS}$$
PERは簡単に言うと、株の割高・割安を判断するための指標です。PERが大きいほど割高を意味し、PERが小さいほど割安を意味済ます。
言い換えると分数の性質上、株価(分子)に対してEPS(分母)が小さいほどPERは大きくなり、EPS(分母)が大きいほどPERは小さくなると、解釈できます。
実際の例にあてはめて練習
例えば、同じ業界の会社A,BにPERが以下の様な場合どのような導出ができますか?
*PERは業界によって基準が異なるため、今回は同じ業界に設定しています。
- AのPER:40倍
- BのPER:15倍
導出:PERの観点からAは割高でBは割安なので、Bの株の方が魅力的であると考えられる。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。PERはあくまでも現時点の利益から求められた指標です。そのため、現時点で割高のAを無条件で切り捨てるという判断はNGです。
なぜなら、PERは割高・割安だけでなく、その市場への期待度も見て取れるの指標だからです。
例えば、現時点では利益が低くても、その市場や技術に将来性がある場合、投資家はそこに期待して資金を注ぎます。そうなると、PERは大きな値になります。しかし、将来的にその市場が化けてより大きな利益を生み出したどうでしょう。きっとPERは現時点よりも低い値を示すことになるでしょう。
*ベンチャー企業にあてはめると理解しやすいかも!
要するに、PERが低いのは現時点ではメリット、PERが高い場合は将来的なメリットになる可能性があると考えられます。
PERをまとめると
- EPS(1株あたりの利益)の何倍になっているのかを表す指標
- PERの主な目的は株の割高・割安の判断
- PERが大きいと割高、小さいと割安
- 市場・技術への期待度も見て取れる
- PERが低いと現時点では利益の可能性が大きい
- PERが高いと将来的な利益の可能性が大きい
- 判断材料としてPERだけを用いるのは危険!
ROE(Return On Equity): 株主資本利益率
ROEとは
ROE(Return On Equity)とは企業が株主のお金(=株主資本,自己資本)で、どれだけ効率的に利益を出しているかを示す指標です。ROEは当期純利益を株主資本(=自己資本)で割って100倍することで求められます。
$$ROE=\frac{当期純利益}{自己資本}\times 100$$
ROEは簡単に言うと、私たち投資家のお金を企業がどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す指標です。ROEが高いほど自己資本を効率的に使っていて、ROEが低いほど自己資本をうまく活用できていないことになります。
また、ROEは10%以上なら良いとされています。加えて、「ROEが年間で15%なら、四半期の業績を心配することはない」というローレンバフェットの言葉にもある通り、ROEが過去5年にわたり15%以上の会社にすると更に堅実であるとされています。
ただ!15%以上に設定すると業種が限られてしまいます。その場合は、15%に届いてなくても同業他社と比較して高い水準であればOKを出すという考え方もあります。
*ローレンバフェット:2017年に世界長者番付で2位になった大物投資家
実際の例にあてはめて練習
例えば、同じ業界の会社A,Bがあります。ROEが以下の様な場合どのような導出ができますか?
*ROEは業界によって基準が異なるため、今回は同じ業界に設定しています。
- AのROE:25%
- BのROE:9%
導出:ROEの観点からBよりAの方が魅力的であると考えられる。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、ROEは負債を考慮していないことです。そのため、もしかしたら、Aは莫大な負債を抱えることで、Bよりも利益を出していると考えることができますよね。負債の多さは倒産リスクや金利リスクが高いということでもあります。
また、ROEは業界によって平均値が異なります。そのため、Bは10%を下回ってはいるが、同じ業界の他社と比べたら高水準な値であるという可能性もあります。それを見逃すのはとても勿体ないことです。
つまり、ROEを使った分析をするときは
- 負債の可能性を考えること
- 同業他社と比較すること
が大切であると言えます。また、ROEだけで投資先を選ぶことは、とてもリスクが高いので他の指標と組み合わせながら分析しましょう。
ROEをまとめると
- ROEは投資家のお金を企業がどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す指標
- ROEが10%以上だと優良企業の可能性あり
- 負債を考慮できないというデメリットがある
- 判断材料としてROEだけを用いるのは危険!
ROA(Return On Assets): 総資産利益率
ROAとは
ROA(Return On Assets)とは企業が保有する資産を使ってどれだけ利益を出したかを示す指標です。ROAは当期純利益を総資産で割って100倍することで求められます。
$$ROE=\frac{当期純利益}{総資産}\times 100$$
*総資産は(資本+負債)で求められます。
また、ROAは高いほど資産を効率的に使っていて、低いほど資産をうまく活用できていないという解釈ができます。
ROAは通常7%を上回ると優良企業である可能性が高まります。
実際の例にあてはめて練習
例えば、同じ業界の会社A,Bがあります。ROAが以下の様な場合どのような導出ができますか?
*ROAは業界によって基準が異なるため、今回は同じ業界に設定しています。
- AのROA:25%
- BのROA:9%
導出:ROAの観点からBよりAの方が魅力的であると考えられる。なぜなら、ROAが大きいことは、たとえ負債の額が多くても資産の運用能力が高いことの証明にもなります。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、資本と負債の比率です。
もし、資本が極端に負債よりも大きい場合、つまり負債比率が低い場合
→ROAが高くても株主に分配される利益が少なくなります。なぜなら、資本が多いことは株主の数も多いということであり、1株当たりの利益(EPS)が低くなるからです。
逆に、負債が資本に対して極端に多き場合、つまり負債比率が高い場合
→ROAが低くても株主に分配される利益は多くなる可能性があります。なぜなら、資本が少ないということは株主の数も少ないということであり、1株当たりの利益(EPS)が高くなるからです。ただし、負債比率の高さは借金の返済や金利の支払いによるリスクもあります。ROAが負債利子率を下回ると、ROEが低下して株主の利益も減少する可能性があります。
要するにROAは単体ではあまり効力を発揮せず、ROEなどの他の指標と組み合わせることが重要であるということです。
*負債利子率:借り入れたお金(負債)に支払はなければならない利子
ROAをまとめると
- ROAは総資産(負債+資本)をどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す指標
- ROAが大きいと資産を効率的に使っていて、小さいほど資産をうまく活用できていない
- ROAが7%以上だと優良企業の可能性あり
- 判断材料としてROAだけを用いるのは危険!
BPS(Book-value Per Share): 1株当たり純資産
BPSとは
BPS(Book-value Per Share)とは企業の安定性や解散価値を見る指標です。企業の純資産を発行済み株式数で割ることで求められます。
$$BPS=\frac{純資産}{発行済み株式数}$$
*純資産は(資産ー負債)で求められます。純資産には自己資本以外に、利益準備金や利益の再投資の合計などがある。
また、BPSは高いほど企業の財務状況が良く、株主に帰属する資産が多いと解釈できます。。
簡単に言うと、企業が所有する資産をすべて売り払って借金を返した後に、株主に残る金額を示しています。
実際の例にあてはめて練習
以下のような場合の導出を考えてください
- 企業Aの純資産が200億、発行済み株式数が20万株、株価が5000円
- 企業Bの純資産が150億、発行済み株式数が15万株、株価が4000円
導出:BPS = 純資産 ÷ 発行済み株式数 より、
- A社のBPS = 200億円 ÷ 20万株 = 10万円
- B社のBPS = 150億円 ÷ 15万株 = 10万円
ここから、A社とB社のBPSは同じであることがわかります。つまり、両社の株は、会社の解散価値に対して同じ価格で取引されているということです。これがBPSの限界です。では、BPSを最大限活用するにはどうしたらよいか。それが、PBRという指標です。
BPSをまとめると
- BPS企業の安定性や解散価値を見る指標
- BPSが高いほど株主に対する純資産の割り当てが多くなり魅力的
PBR(Price Book-value Ratio) :株価純資産倍率
RBRとは
PBR(Price Book-value Ratio)とは会社の資産価値と株価の関係を見る指標です。株価をBPSで割ることで求められます。
$$PBR=\frac{株価}{BPS}$$
PBRが1倍を超えると割高、1倍を下回れば割安と解釈できます。
簡単に言うとPBRは割高・割安を判断するための指標です。
実際の例にあてはめて練習
以下の様な場合どのような導出ができますか?(さっきのBPSの続きです。)
- 企業Aの純資産が200億、発行済み株式数が20万株、株価が5000円
- 企業Bの純資産が150億、発行済み株式数が15万株、株価が4000円
導出:まずはBPSを求めましょう。BPS = 純資産 ÷ 発行済み株式数 より、
- A社のBPS = 200億円 ÷ 20万株 = 10万円
- B社のBPS = 150億円 ÷ 15万株 = 10万円
BPSは同額です。では、PBRはどうなるでしょう。PBR = 株価 ÷ BPSより、
- A社のPBR = 5000円 ÷ 10万円 = 0.05
- B社のPBR = 4000円 ÷ 10万円 = 0.04
これは、株価はA社の方が高いため、PBRはA社の方が高くなります。PBRが低いほど、株価が割安であると判断できるので、B社の株の方がお得であると言えます。
したがって、BPSとPBRの比較から、B社の株を買うべきであるという結論になります。
しかし、この結論には以下のような注意点があります。
BPSとPBRは、会社の安定性や成長性を考慮していないので、将来的な業績や収益性については保証できません。BPSとPBRは、業種や市場によっても異なるので、同じ業種や市場の他社と比較することも必要です。
また、BPSとPBRだけでなく、他の財務指標や業績予想なども参考にすることが重要です。
PBRをまとめると
- PBRが1倍を超えると割高、1倍を下回れば割安
- PBRは割高・割安を判断するための指標
- 安定性や成長性を考慮していない
- 将来的な業績や収益性については保証されない
Finish
長くなりましたが、今日はこれで終わります。お疲れさまでした。沢山、頭を使って疲れたと思うので、今日はゆっくり休んでくださいね。