はじめに
LANの性能をどんなによくしても、WANの性能が低ければ全体の性能向上にはつながりません。また、WANはどうしても通信においてボトルネックになってしまいます。
では、どうしたらいいのでしょう?
それを解決してくれるのがWAS(WAN Acceleration System)です!
今回はそのWASをパパっと理解しながらも、ポイントはしっかり逃がさず抑えていきます!
WASの基本知識
WAS(WAN Acceleration System)は、WANを使ったデータ通信を高速化するための技術です。WANは、地理的に離れた場所を結ぶネットワークなので、遅延や帯域幅の制限が発生しやすく、通信が遅くなることがあります。WASは、この問題を解決するために、主に以下の2つの機能を提供します。
- データ圧縮機能:
データの重複を減らして圧縮し、通信に使うデータ量を少なくします。これにより、ネットワークの負担が軽くなり、データの送受信が速くなります。
*圧縮機能の具体的な流れはこちら - 代理応答機能:
遠くにあるサーバーに確認のメッセージを送る代わりに、WASがその応答を代行します。これによって、データのやり取りが速くなり、無駄な時間が減ります。
*代理応答機能の具体的な流れはこちら
さらに、WASにはキャッシュ機能もあり、よく使うデータを保存しておくことで、再び同じデータを送る必要がなくなり、通信がさらに効率的になります。
このように、WASはWANでの通信を速く、効率的にするための重要なシステムです。
メリット
- 通信速度の向上:
- データ圧縮やキャッシュ機能により、データ転送の速度が向上し、特に遅延の多いWAN環境でのパフォーマンスが改善されます。
- 帯域幅の節約:
- データ圧縮により、ネットワークを通じて送信するデータ量が減少し、帯域幅の使用を最小限に抑えることができます。
- 遅延の低減:
- 代理応答機能により、確認応答(ACK)の処理が短縮され、通信のラウンドトリップタイム(RTT)が減少します。
- 効率的なキャッシュ:
- よくアクセスされるデータをローカルにキャッシュすることで、再度のデータ要求に対する応答が速くなります。これにより、サーバーへのリクエスト回数が減り、全体の通信負荷が軽減されます。
- ネットワーク負荷の軽減:
- WANのトラフィックが減少するため、全体のネットワーク負荷が軽くなり、他のアプリケーションのパフォーマンスにも良い影響を与えることがあります。
デメリット
- コスト:
- WASを導入するための初期投資やライセンス費用が高くつく場合があります。また、維持管理のためのコストも考慮する必要があります。
- 複雑な設定と管理:
- WASの設定や管理は技術的に複雑で、適切な運用には専門的な知識と経験が必要です。
- 圧縮によるオーバーヘッド:
- データの圧縮と復元には処理時間がかかり、場合によってはそのオーバーヘッドがパフォーマンスに影響を与えることがあります。
- 互換性の問題:
- 特定のプロトコルやアプリケーションに対して、WASが適切に対応できない場合があり、互換性の問題が発生することがあります。
- 故障時の影響:
- WASに依存しすぎると、その機器が故障した場合、通信速度や効率が急激に悪化する可能性があります。
圧縮機能の流れ
流れの説明:
- データ送信側(クライアント):
- 送信したいデータを準備します。
- WASデータ圧縮機能:
- データを圧縮して、送信に必要なデータ量を減らします。
- WAN:
- 圧縮されたデータがWANを通じて送信されます。
- WASデータ復元機能:
- 受信側のWASが圧縮データを元のデータに復元します。
- データ受信側(サーバー):
- 復元されたデータが受信されます。
1. データ送信側(クライアント)
+-------------------------------+
| 送信データ |
| (例: ファイル、テキスト) |
+-------------------------------+
↓
2. WASデータ圧縮機能
+-------------------------------+
| 圧縮されたデータ |
| (例: ZIP圧縮) |
+-------------------------------+
↓
3. WAN
+-------------------------------+
| 圧縮データが送信される |
| (ネットワーク経由) |
+-------------------------------+
↓
4. WASデータ復元機能
+-------------------------------+
| 圧縮データを復元する |
| (元のデータに戻す) |
+-------------------------------+
↓
5. データ受信側(サーバー)
+-------------------------------+
| 復元されたデータ |
| (例: 元のファイル、テキスト) |
+-------------------------------+
代理応答機能の流れ
流れの説明:
- データ送信側(クライアント):
- クライアントがデータの要求をサーバーに送信します(例: ファイルのリクエスト3つ分)。
- WAS代理応答機能:
- WASがサーバーに代わって確認応答(ACK)をクライアントに送信します。これにより、サーバーに直接送信する必要がなくなり、応答の時間が短縮されます。
- WAN:
- 代理応答がWANを通じて送信されます。
- データ受信側(サーバー):
- サーバーはデータ要求を受け取り、要求されたデータ(ファイルなど)をクライアントに送信します。
- データ受信側(サーバー):
- サーバーがデータを送信し、クライアントがそれを受け取ります。
1. データ送信側(クライアント)
+-------------------------------+
| データ要求 |
| (例: ファイルのリクエスト) |
+-------------------------------+
||| ↑↑↑
↓↓↓ |||
2. WAS代理応答機能
+-------------------------------+ ---------------------------|
| 要求に対する応答を代理で送信 |
| (確認応答: ACK) |
+-------------------------------+ |
| ↑
↓ |
3. WAN
+-------------------------------+ |
| 応答がWANを通じて送信される | この区間の確認応答はWASが終わらせているから
| (ネットワーク経由) | 省略できる=「ラウンドトリップの短縮」
+-------------------------------+ |
| ↑
↓ |
4. データ受信側(サーバー)
+-------------------------------+ |
| データ要求を処理 |
| (例: ファイルを送信) |
+-------------------------------+ ---------------------------|
||| ↑↑↑
↓↓↓ |||
5. データ受信側(サーバー)
+-------------------------------+
| データ応答 |
| (例: ファイルの送信) |
+-------------------------------+
ここから、分かるように3つ分のリクエストがある場合はWASが代理で確認応答をしてくれるので、WASーWANーWAS間の通信を最適化できます。
では、念のため、WASを使わない通信も見ていきましょう!
WASを使わない場合
1. データ送信側(クライアント)
+-------------------------------+
| データ要求 |
| (例: ファイルのリクエスト) |
+-------------------------------+
||| ↑↑↑
↓↓↓ |||
2. WAN
+-------------------------------+
| データ要求がWANを通じて送信 |
| (ネットワーク経由) |
+-------------------------------+
||| ↑↑↑
↓↓↓ |||
3. データ受信側(サーバー)
+-------------------------------+
| データ要求を受け取り処理 |
| (例: ファイルを送信) |
+-------------------------------+
ご覧のようにすべての区間で、3往復する必要があります。また、WASがないとデータ圧縮機能も使えないので、通信がより遅くなります。
まとめ
要するに…
WAS(WAN Acceleration System)は、通信においてボトルネックとなりやすいWAN環境での通信を高速化するための技術です。このシステムには、主にデータ圧縮、キャッシュ、代理応答という3つの機能があります。
①データ圧縮機能は、通信時に送信するデータ量を減らすことで、ネットワークの帯域幅を節約し、通信速度を向上させます。
②キャッシュ機能は、頻繁にアクセスされるデータをローカルに保存しておくことで、再度同じデータをリクエストされた際にWANを通じた通信を省略し、より迅速な応答を可能にします。
③代理応答機能は、通常サーバーが処理するACK(確認応答)メッセージをWASが代行することで、サーバーとの直接的な通信を減らし、ラウンドトリップ時間(RTT)を短縮します。
これらの機能により、WAN環境での通信効率が大幅に改善されますが、WASにはいくつかのデメリットも存在します。例えば、このシステムは技術的に複雑であり、導入や維持に高いコストがかかります。また、WASが冗長化されていない場合、一方のWASが故障すると通信効率が著しく低下する可能性があります。
おわりに
本日は終了です!お疲れさまでした!
今回も勉強したことで確実に成長しました!これからも少しずつ1歩ずつ成長を続けていきましょう!
では、今日はここで終わりたいと思います。
さらばじゃっ!