【9秒チャレンジ】
QoSの帯域制御には、帯域の確保(ギャランティード型)と帯域の調整(シェーピング、ポリシング)があります。確保では特定の通信に帯域を保証、調整では速度や転送量に制限をかけます。ギャランティード型は優先度に基づき帯域を確保し、シェーピングとポリシングは流量を調整します。
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QoSにおける帯域制御の概要
QoSは、ネットワーク内のトラフィック(通信データの流れ)に対して一定の品質を保証するための技術です。特に、動画配信や音声通話のように遅延が発生すると支障が出るサービスにおいて、QoSが重要になります。
QoSを実現するために、一般的に2つの制御方式が使われます:
- 優先制御:特定のデータに対して優先度を設定し、重要なトラフィックを優先的に処理する。
- 帯域制御:特定の通信の帯域(利用可能な通信速度)を確保したり、上限を設けてトラフィックの量を調整する。
今回は「帯域制御」に焦点を当てて、各技術や方式について具体的に説明していきます。
帯域制御の主な方式と実現方法
帯域制御は、ネットワーク内でのデータ転送速度や量を管理することで、通信品質を確保する手法です。帯域制御の目的は、通信が混雑しないようにすることや、重要な通信の品質を守ることです。この制御は以下の2つに分類されます。
帯域制御には、
・帯域の確保
・通信速度/転送量の上限を設ける
といった2つのパターンがあります。
帯域の確保する方法
「ギャランティード型」とは、通信事業者の閉域網において特定の通信フロー(例えば、特定のアプリケーションやサービス)に対して、帯域を確保・保証する方式です。この方式を用いることで、ネットワークが混雑している場合でも、特定の通信には必要な帯域が必ず提供されます。代表的なサービスに「専用線サービス」や「広域イーサネット」などがあります。
- 閉域網:インターネットに接続されていない限定的な領域(たとえば、IP-VPNや広域イーサネットなど)
- IP-VPN:VPN技術を用いて、インターネットを経由せずに企業の拠点を接続するサービス。
- 広域イーサネット:あたかも広域に渡るLANのように、物理的には離れた拠点間でローカルネットワークのような接続ができるサービス。
では、ついでにベストエフォートという用語も知っておきましょう!
ベストエフォート
ベストエフォートとは帯域の保証をしない通信方式のことを指します。
具体的には、回線の混雑状況に応じて速度が変動し、必要な帯域が確保されるわけではありません。プロバイダは最善を尽くしてサービスを提供しますが、確実な速度や品質は保証されない、というのが特徴です。インターネット接続など、一般的な通信サービスに多く採用されています。
通信速度・転送量の上限を設ける方法
帯域の調整は、特定のフローに対して通信速度や転送量の上限を設定することで、トラフィックの流れを管理する方式です。主にシェーピング(Shaping)とポリシング(Policing)の2つの技術で実現します。
シェーピング(Shaping)
- 概要:シェーピングは、一時的にパケットをバッファに蓄えて、設定した速度でトラフィックを流す方法です。バースト性(急激にトラフィック量が増加する現象)を抑えつつ、ネットワークの混雑を防ぎます。
- 特徴:通信速度を調整してなめらかに流すため、全体的な通信品質が向上します。バッファが使われるため、若干の遅延が発生することもあります。
- 用途:音声や動画のように、スムーズな通信が求められるトラフィックに適しており、サービスプロバイダがエンドユーザに対して安定した通信速度を提供する際に使われます。
ポリシング(Policing)
- 概要:ポリシングは、流れてくるトラフィック量を監視し、設定値を超えたトラフィックを即座に廃棄する方式です。ポリシングでは、流量が過剰になった場合にパケットが削除されるため、特定のトラフィック量を超えないように厳格に管理できます。
- 特徴:シェーピングとは異なり、バッファリングは行わず即時に制限するため、トラフィック量の超過があれば廃棄されます。これによりトラフィックが設定量内に収まりますが、廃棄が増えると通信品質が低下する可能性があります。
- 用途:大量のデータ転送が不要なサービスや、一定のトラフィック量のみを許容する必要がある場合に用いられます。例えば、通信コストの抑制やトラフィック制限をかけたい場合に役立ちます。
シェーピングとポリシングの違い
項目 | シェーピング | ポリシング |
---|---|---|
制御方法 | バッファに貯めてから送信 | 即時に制限・超過は廃棄 |
適応トラフィック | バースト性のある通信 | 高速性を求めない通信 |
長所 | 通信がスムーズで品質が保たれる | トラフィック量を厳格に管理可能 |
短所 | 遅延が発生する場合がある | 通信品質が低下する可能性がある |
まとめ
要するに…
QoSにおける帯域制御とは、ネットワーク上で特定の通信の品質を確保するために、通信速度や帯域幅を管理・調整する技術のことです。この帯域制御には大きく2つの方向性があります。一つは帯域を確保する方法で、もう一つは通信速度や転送量の上限を設ける方法です。
帯域を確保する方法としては、ギャランティード型という方式があります。この方式では、特定の通信フローに対して帯域を保証し、ネットワークが混雑している場合でも必要な通信が安定して行えるようにします。この手法は通信事業者が提供する閉域網、たとえばIP-VPNや広域イーサネットなどで広く使われています。閉域網とは、インターネットに接続されていない限定されたネットワーク環境のことで、通信品質を高く維持することができます。一方、ベストエフォート型という方式もあり、こちらは帯域の保証を行わず、可能な範囲で最善を尽くして通信を提供するものです。多くのインターネット接続サービスがこの方式を採用しています。
もう一つの帯域制御の方向性として、通信速度や転送量の上限を設ける方法があります。これにはシェーピングとポリシングという技術が使われます。シェーピングは、到着するパケットを一時的にバッファに蓄え、設定された速度で流すことでトラフィックをスムーズに整える方法です。この手法ではバースト性のある通信を安定化させることができる一方で、バッファの使用による遅延が発生する場合があります。一方、ポリシングは流れてくるトラフィックの量を監視し、設定された上限を超えた場合に即座にパケットを廃棄する方法です。こちらは厳格にトラフィック量を制御できる反面、廃棄が発生すると通信品質が低下する可能性があります。
これらの帯域制御の技術を支える具体的な手法として、DiffServやMPLSといった技術があります。DiffServではIPパケットに優先度を示すタグを付け、ネットワーク内で異なる優先度に応じたトラフィック処理を実現します。また、MPLSではパケットにラベルを付け、高速かつ効率的なルーティングを行い、特定の通信フローに帯域を確保することができます。
これらを総合すると、QoSにおける帯域制御は、通信の優先度や帯域の確保を適切に管理することで、ネットワーク上の重要なサービスやアプリケーションに高品質な通信環境を提供するための中核的な技術であることがわかります。